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日本ローザンヌ委員会


近づく第3回ローザンヌ世界宣教会議
日本ローザンヌ委員会 正木牧人

世界の注目する「第3回ローザンヌ世界宣教会議」が2010年10月15日から25日にかけて南アフリカのケープタウンで開催されます。「第1回ローザンヌ世界宣教会議」は1974年に開かれ、全世界の福音派諸教会にビジョンと活力と協力のネットワークを与えました。宣教の新しいチャレンジに満ちた21世紀、もう一度ローザンヌ世界宣教運動の精神にふれ、ともに世界宣教に積極的に取り組む好機が到来しました。
近代の世界宣教運動の結束を促し力を吹き込んだ1910年の「エディンバラ世界宣教会議」から百年の時が流れ、世界の事情は大きく変化しました。2つの大きな戦争を経て、政治的、経済的、精神的枠組みは大きくかわり、更に21世紀に入っても高齢化、環境、テロリズムや戦争、貧困や抑圧、メディアの発達など、対応しきれない問題が次々に深刻化していきます。私たちには変わらない福音のすべてを、全教会が心をあわせて、時代に柔軟に対応しつつ地の果てまで宣べ伝える使命があります。世界の福音派諸教会が2010年、「第3回ローザンヌ世界宣教会議」に大きな期待をもって集います。

■ローザンヌ世界宣教運動
1910年の「エディンバラ世界宣教会議」から世界宣教運動は大きく進展しました。宣教協力は教会一致運動ともあいまって世界教会会議(WCC)の設立に進展しました。主流教会の合理主義的色彩の強い神学を憂う世界の福音派諸教会の祈りは1974年、「第1回ローザンヌ世界宣教会議」として結実します。スイスのローザンヌに150カ国から福音派教会の指導者が集いました。主要な貢献は3点です。
第1に「ローザンヌ誓約」です。起草者ジョン・ストットらは福音的宣教の使命を明文化しました。「ローザンヌ誓約」はその後福音派教会の宣教に関する考え方やあり方に大きな影響を与えてきました。
第2に、「未伝の人々の発見」です。当時、世界教会会議は既に世界の全国家に教会は存在するのでこれ以上の宣教師は不要であると発表していました。
第3の貢献は、ホリスティック、包括的な宣教理解の再発見です。
「第1回ローザンヌ世界宣教会議」は会議で終わりませんでした。「ローザンヌ世界宣教委員会」が構成されローザンヌ世界宣教運動として引き継がれました。出版、セミナー、国際会議などを通して、福音派諸教会を結ぶ大きな運動体となって世界の福音宣教を励ましてきました。
ローザンヌ世界宣教運動は触媒のような働き、すなわち、すでにある宣教の取り組みの数々が出会うネットワークの場を提供します。
都市部伝道、児童伝道、イスラム伝道、ユダヤ人伝道、メディア伝道などの宣教分野ごとの交わりも多く設立されました。また、アジア、アフリカ、ヨーロッパというような地域別の交わりも展開されます。
ところが、ローザンヌ世界宣教運動は1989年にフィリピンのマニラでもたれた「第2回ローザンヌ世界宣教会議」以降1時混乱し力が分散され失速しました。一部の派生運動は活発に続けられましたが、「ローザンヌ世界宣教委員会」の働きは大きく制限されてしまった状態で21世紀を迎えました。
しかし混迷を深める世界情勢の中、宣教の使命を共有するローザンヌ世界宣教運動の再興を期待する世界中の声は多大でした。主は祈りに答えてくださり、今、運動は紆余曲折を経ながら幾多の課題を解決し、あらためて活力を取り戻しつつあります。
ひとつの転機になったのは2004年にタイのパタヤで開かれた「ローザンヌ・フォーラム2004」という集まりです。「第2回ローザンヌ世界宣教会議」において心配を残した種々の課題には丁寧な手だてがほどこされ、新しいリーダーシップが整えられ、21世紀の福音宣教のために運動のモメンタムが回復されつつあります。この集まり以後、世界各地で2010年の「第3回ローザンヌ世界宣教会議」の開催を望む声が高まってきました。新しい心で、私たちの時代の新しい事情に沿った宣教協力のうねりを期待して、世界はもう一度手を取り合って立ち上がります。

■日本の教会とローザンヌ運動
日本の福音派教会はローザンヌ世界宣教運動のはじまりから積極的に参画しました。1970年代、80年代は日本福音同盟がローザンヌ日本コミッティーをつくり積極的に推進していました。関西ミッションリサーチセンターは「誰もが知りたいローザンヌ・シリーズ」を刊行して運動の精神の紹介と普及に力を尽くしました。
 現在、日本の教会がローザンヌ世界宣教運動についてあまり知らないことには事情があります。1989年の「第2回ローザンヌ世界宣教会議」以降、日本の福音派諸教会は当時のローザンヌ世界宣教運動に疑問と不安を感じ、教会を守る配慮から運動との積極的な関わりを停止したのです。
 関西ミッションリサーチセンターは2002年にローザンヌ世界宣教運動の再興のきざしの報に触れました。同センターには1974年の「第1回ローザンヌ世界宣教会議」以来、日本福音同盟とよい協力関係の中でローザンヌ運動と日本の福音派諸教会の架け橋の一翼を担ってきた背景があります。このたびの運動再興の事情を確認し、必要ならば再び日本の福音派諸教会との橋渡しとなるべく使命を感じました。
再興に尽力した世界の指導者たちと連絡をとり、また、アジアで続けられてきたローザンヌ運動に関わりを深めてきました。2002年夏の「第5回アジア・ローザンヌ宣教会議」、2004年秋の「ローザンヌ・フォーラム2004」、2006年夏の「第6回アジア・ローザンヌ宣教会議」を紹介し、諸教会からの参加を募りました。2004年にはパタヤにてローザンヌ・ネットワーク・ジャパンが結成され、同センターは連絡所となりました。
 
■2004年以降の運動
ここで2004年以降のローザンヌ世界宣教運動の再起と展開、そして日本での働きをもう少しご紹介します。
2004年9月、タイのパタヤでローザンヌ世界宣教委員会主催による「ローザンヌ・フォーラム2004」が開かれ、「新たなビジョン、新たな心、刷新された召命」をテーマに掲げて世界130カ国から1500人の教会指導者、神学者、宣教指導者が参加、同運動の世界規模の復調を見ました。
「多元主義的なポストモダンの時代におけるキリストのユニークさ」「職場での伝道」「児童伝道」「メディアとインターネット」「9・11後の世界と伝道」など世界宣教に関連した31の緊急課題をテーマにしたグループに分かれ会期中に23時間にわたる討議やグループ間の分かち合いを重ね、成果は翌年編集されLausanne Occasional Papers (LOPs)として出版されました。その後、「新世代会議Young Leaders’ Gathering(クアラルンプール・2006年)」や「ローザンヌ国際指導者会議(ブダペスト・2007年)」などが開かれました。
1989年以降の運動失速のあともローザンヌ・ユダヤ人伝道委員会など少数の特別委員会は世界的ネットワークを保ち活動してきました。これは日本でも継続されてきました。
また、アジア諸国で開く「アジア・ローザンヌ宣教大会」は数年ごとにホストを回り持ちしながら継続されました。シンガポール、インドネシア、マレーシアに続き、第5回の大会がソウルで2002年夏に開かれました。
2002年の大会前に、アジア・ローザンヌ世界宣教委員会委員長であり、またソウルでの大会実行委員長でもあった韓国の李鐘潤牧師が日本の参加者を探して神戸の旧友に連絡を取ってくださいました。それにより関西ミッションリサーチセンターはローザンヌ運動の現況を知りました。
日本福音同盟とよい関係のなかで関西ミッションリサーチセンターは「ローザンヌ・フォーラム2004」に日本からの参加者を募りましたところ、約20名の方々が参加できました。そこで世界の指導者と世界宣教のビジョンを共有し、交わりと研鑽が宣教の推進力となることを実感しました。会期中に今後のローザンヌ運動情報や相互の情報交換のための「ローザンヌ・ネットワーク・ジャパン(LNJ)」を発足し、連絡所が関西ミッションリサーチセンターに置かれました。LNJは希望者に不定期でニュースをインターネット配信しています。
関西ミッションリサーチセンターは2007年に、「ローザンヌ・フォーラム2004」の成果であるLOPsの日本語版権をいただき、翻訳出版の第一弾として「世界のユダヤ人伝道の今後」を出版しました。

■新総裁ダグラス・バーゼル氏
 2004年にローザンヌ世界宣教委員会の総裁を受け継いだダグラス・バーゼル氏は日本とのゆかりの深い先生です。1980年から1999年まで長きにわたり、スクラム伝道で知られるライフ・ミニストリーズの宣教師として日本に滞在、日本の総裁を経て現在ライフミニストリーズの国際レベルの組織であるアジアン・アクセスの総裁を務めてこられました。米国ボストン郊外のゴードン・コンウェル神学校の世界宣教図書館の創立館長でもあります。54歳の若さですが、新しい世代のバランスのとれた世界的宣教リーダーとして注目されています。「第3回ローザンヌ世界宣教会議」が2010年に開催されます。会議準備のため、2008年春からローザンヌ関係のみに働きを絞っておられます。

■第3回ローザンヌ会議の意義
2008年3月に、東京と神戸でバーゼル氏を迎えて集まりがもたれました。なぜ今、また何を目指して、2010年に世界から4千人の集う「第3回ローザンヌ世界宣教大会」を開催するのか、また、今後のローザンヌ世界宣教運動の幻についてバーゼル氏が力強く語りました。お話を抜粋、要約してご紹介します。

■世界宣教会議の必要
教会史上、大きな教会会議は教会が内的問題や外的圧迫による危機感をもつときでした。今日私たちの教会にはその両方が見られます。教会の中の問題としては、たとえばいわゆる「繁栄の福音」や、きよさ、一致、純粋さの欠如が挙げられるでしょう。外的圧力としては、多くの地域での迫害や、反キリスト教的知的雰囲気の広がりがあるでしょう。
1974年の「第1回ローザンヌ世界宣教会議」から世界は劇的変化を経験しました。1974年、世界は脱植民地時代、ジェット旅客機のの普及、学生運動の激化などから10年を経ていました。今日、世界は新しい世紀を迎え、9・11を経験して10年が経っています。イスラム教とキリスト教の大規模な文明衝突、諸国の急速な発展により新しい世界覇権争いへと時代は変わりました。今、世界と教会の内外の状態を共に把握し、宣教の使命の再確認が求められます。

■7つの世界宣教のチャレンジ
宣教と神学はひとつです。すべての神学は宣教活動に反映し、すべての宣教活動は神学的基盤に由来しなければなりません。
新しい世界規模大課題には、世界規模の対話を重ねることによらなくては地球的解決策を得ることはできません。ローザンヌ運動は「全福音を、全教会が、全世界へ」という標語を掲げます。世界宣教のチャレンジには少なくとも7分野があります。

■全教会■1.新しいバランス
教会は世界にまたがるキリストの体です。次世代のキリスト教世界はどんな姿でしょうか。西洋社会統治とは違う顔をもちつつある現代の世界において、いかに新しい相互関係とバランス関係を築いて一致していくかが課題です。
いわゆる北から南への移行は早くまた劇的ですが、一様に起こってはいません。そのため不均衡が生じています。経済的資源、権力、施設、言語、科学技術などの新しい平衡を見いださなければなりません。

■全教会■2.教会の悔改め
第2に、全教会が純粋さ、きよさの点で罪の悔改めを迫られています。
世は、キリスト者をそのメッセージの内容ではなく、そのように生きていない偽善を見抜いて軽蔑します。
クリス・ライトは、聖書から離れている、自分の繁栄のみを望む、偽りの教えが放置されているなど、21世紀の教会と16世紀宗教改革前夜の教会の類似点を指摘しました。

■全福音■1.キリストの独自性
第3に、ポスト・モダンの多元主義世界におけるキリスト教の真理性主張についてです。欧米は再び福音化される可能性はあるのでしょうか。
ハーバード大学新総長は就任挨拶で「大学の象徴、ベリタスの楯は神の啓示の真理性という清教徒の信念を表してきた。しかし今は違う。真理は所有できず、汗して追求し続けるものだ。大学は居心地の悪い懐疑状態にあえて徹するべきである。」と述べました。多くの大学でキリスト教団体が学生伝道の機会を奪われつつあります。キリストのみが救い主であることの表明が求められます。

■全福音■2.苦しみの神学
第4は、確固たる苦しみの神学の必要性です。貧しさやテロリズム、エイズ、危機に瀕する児童など、苦しみの現実を放置しない神学です。麻薬のように働いて現実感覚を麻痺させる繁栄の神学が猛威をふるっています。そこには十字架がありません。十字架の神学が求められています。

■全世界■1.イスラムへの対応
第5に、イスラム伝道についてです。西洋社会の相対的位置低下に伴いイスラム世界が勢力を伸ばす傾向はしばらく続くでしょう。共生と伝道のための議論が待たれます。

■全世界■2.終わっていない使命
第6は、宣教活動のまだ行き届いていない分野の認識です。
他宗教への宣教、心身障害者、文字でなく聞くことで学ぶ人々、都市に住む人、ディアスポラ、難民、移民、危機にいる女性や子ども、青年たちへの宣教、環境問題の取り組みなど、課題は多いのです。

■全世界■3.メディア革命の活用
第7に、世界規模のコミュニケーションや価値観に影響の大きいメディアです。否定的・破壊的なメディアの影響力を防ぎつつ、肯定的・建設的な潜在能力を見つけ開発し宣教に役立てる必要があります。
これらの世界大のチャレンジに福音的な教会が共に取り組んでいくべきであろう、と考えています。

■2010年、ケープタウン
2010年は「エディンバラ世界宣教会議」百周年に当たります。ジョン・R・モットーは、「エディンバラ世界宣教会議」の組織的な継承者は世界教会協議会だが、その宣教スピリットの継承者はローザンヌ世界宣教運動であろう、と言いました。
ウィリアム・ケアリーは1810年に国際宣教会議をケープタウンで開く幻をもっていたといいます。200年後に実現しようとしています。
 バーゼル氏の幻は、「第3回ローザンヌ世界宣教会議」が単に参加者に感動を与えるだけではなく、そこに新しい一致が樹立され、明瞭なビジョンや取り組むべき優先順位を共有する結果を生み出すことです。参加者がローザンヌ運動をホーム、故郷のように慕わしく思い、絶望的現代に生きる人々に福音のホープ、希望を与えることができるようになり、世界のキリスト者が尊敬しあい学びあうような互いのヒユーミリティ、謙遜さを得るように夢見ています。
現在、プログラムが様々なグループをバランスよく代表するリーダー達によって慎重に検討されています。会議前後に参加者、協力者のネットワークを広げ、運動体として継続的に宣教的課題に取り組む体制を整えつつあります。

■日本でこれから
ローザンヌ・ネットワーク・ジャパンが委員会と連絡をとっていますが、日本からは約30名の正規参加者枠、他にオブザーバーや伝道団体代表者枠、報道関係者枠などがあります。
世界の主、イエス・キリストにあがなわれ、今を日本で生きるように召されている私たち、世界大の交わりの中で日本の宣教、世界の宣教を考え行動する意義は大きいのです。「第3回ローザンヌ世界宣教会議」に期待し、関心をもってよく備え、日本宣教、世界宣教の進展を共に祈りつつ、できることで携わっていきましょう。

委 員 長  金 本  悟
副委員長  末 松 隆 太 郎
書  記  正 木 牧 人
委  員  中 台 孝 雄
委  員  永 井 敏 夫
委  員  デイル・リトル
信徒委員  根 田 祥 一
顧  問  有 木 義 岳
オブザーバー  具 志 堅  聖

日本ローザンヌ委員会(2008年12月1日再結成)