みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように。 マタイ6・10
「たしかに、神はわたしたちに自由意志を与えてくださった」と人々は言います。これにたいして、わたしは次のように答えましょう。「そうです、神はわたしたちに＜自由＞意志を与えてくださいました。それではなぜあなたがたは、自由意志を自由のままにしておかず、あなたがたの＜自己＞意志とするのですか」。もしあなたが自分のしたいままをするならば、それは自由意志ではありません。それは自己意志です。しかし、神は、あなたがたにしろ、だれにしろ自己意志を与えられませんでした。それは悪魔とアダムからきたのです。彼らは神からいただいた自由意志を自己意志に変えてしまいました。なぜなら、自由意志は自分自身のことを望まないからです。自由意志は神のみこころのみを思い、なにものにもしばられず、なにものにもたよらず、執着せず、自由です。
さて、この祈りにおいて、神はわたしたちが自分自身に反対して祈るようにと命じておられます。それによって、最大の敵は実はわたしたち自身であると教えておられます。わたしたちの意志は、わたしたちのうちにある最大の力であり、それに対抗して祈らねばなりません。わが父よ、わたしが自分の意志を持つことをゆるさないでください。わたしの意志に反対し、これを打ち砕いてください。なにごとであれ、あなたのみこころだけがなり、わたしの意志はなりませんように。天においてもそうであるように、そこには自己意志がありませんように、この地上にもみこころが行なわれますように、このような祈りがなされる時、それはわたしたちの人性を傷つけます。なぜなら、自己意志は、世の最大最高の悪であり、自己意志ほど、わたしたちが愛するものはないからです。
単純な信徒のための主の祈りの講解
